山神様にお願い


 どうやったらこの胸の動悸は治まるんだろう。どうやったら、本当に気分よく毎日を過ごせるんだろう。

 店長に会えたら、それがわかるんだろうか。私は例の女性にヤキモチを焼いているんだろうか。自分が一緒にいないのに、彼女は店長と毎日一緒にいるんだって考えて辛くなっているのだろうか。

 資料の文字を目で追う。だけどちっとも頭の中には入ってこなかった。

 店長が、知らない女の人と、私の知らない彼の実家で、一緒に――――――――

 もやもやする、霞がかるようなこれが、これが嫉妬ってやつなんだろうか。

 彼に、会えば―――――――――――・・・・・・

「・・・・ああ、会いたい、なあ~・・・」



 ――――――――――え?



 自分の口から漏れた呟きに、ぎょっとして目を見開いた。


 図書館は相変わらず静かで、皆が黙々と自分のやるべきことをしている。時々聞こえる咳払いやノートをめくる音なんかが、遠くから聞こえる校舎のチャイムと混じっては消えていく。

 私はこっそりと周囲を見回して、ゆっくりと深呼吸した。

 落ち着け、私。

 ・・・・会いたいって、思った、今。

 店長に、あの狐目の大きな口で笑う男の人に、会いたいって――――――――――。


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