山神様にお願い


 ・・・超信用出来ない、この軽い言い方・・・。そう思ったけど、ここで私が頑張ったって、どうせ最後は彼のペースにもってかれるのだ。それが判っていたからため息をついて、流されることにした。

「失礼、します・・・」

「ちゃんと跨ってね。足寒いと思うけど勘弁ね」

 うわー、バイク、初体験だああ~・・・。ドキドキして彼の腰に手を伸ばす。するとぐいーっと両手を引っ張られて、完全に体が密着するまでになってしまった。

「ちゃんと捕まらないと、落ちたら命消えるよ~」

「・・・う、は、はい」

 それもそうか!私はおずおずと腰に両手を回して抱きつく。それは、思ったより居心地が良かった。

 夕波店長が走らせるバイクの後ろに跨って、私はメットの中の音を聞いていた。

 それは閉ざされた空間で反射して、水が吸い込まれるような轟々とした音を響かせる。

 指や肌が出ている足の皮膚は完全に冷え切って、痛いほどだった。

 だけど、私は好きな人の背中に引っ付いているんだ、そう思ったら、指が寒さでちぎれてもいいやって思えた。

 もう、指が何本なくなってしまってもいい。その代わりに今、彼の背中に引っ付いていられるのならば。そう思った。

 まさか自分がこんなことを思うなんて。

 メットの中で目を瞑る。耳に響くは風の反射する音。


 恋をすると人間が変わるって、本当だ。


 私は、どんどん変わっていく――――――――――――



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