山神様にお願い


「・・・まあ、それでいいか」

 そう呟きが聞こえて、私は振り返る。

「え?」

 店長はいつもの微笑みでにっこりと笑うと、よいしょと腰を上げた。

「じゃあ俺、帰るね~。まだ荷物といてないし、あと2時間で山神に出勤だからさー。シカは今日何時入りなの?」

「え、あ、私は8時入りです。って、店長帰るんですか?」

「帰って欲しくない?」

 ニヤニヤとそうきくので、キッパリハッキリと首を横に振る。

「そうじゃなくて!何を考えたのか教えて下さいよ。私、阪上君を無視してればいいんですか?」

「うん、まあ取り敢えずは」

 そう頷いてから、店長はブツブツと言う。甘えるってことしないよな~シカ坊は、だって。

「じゃあね」

 あっさりとそう言って、ほぼ一日一緒にいた夕波店長は帰っていってしまった。

 私は何だかもやもやする頭で、取り敢えずは家事をすることにする。

 ・・・・・何だろう。無視・・・阪上君、また来るのかな~・・・。やっぱり自分から抗議しにいったほうがよくない?それか、阪上家のご両親に言ってみるか・・・。

 掃除機をかけながら色々考えたけど、最後には思考そのものを放り出した。

「やーめた!」


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