山神様にお願い


 正直なところ、寂しくないです。そう思ったけど、それは勿論言わなかった。だって毎日毎日山神でも会っていて、彼はそのまま私の部屋に帰ることが多いので(何せ店から近いから便利でもあるらしい)、同棲してるの?ってくらいには一緒にいるのだ。

 それに、一昨日のクリスマスは、イブも25日当日も、それはそれは甘くて甘くて聞いている方が一瞬で虫歯になりそうな濃厚デートをしたではないか!私は思い出すたびに赤面するその二日間を思い出して、また頬を熱くしてしまった。

 とにかく、もういいのではないだろうかってほど、恋愛経験値の低かった私が3人分の彼氏と経験するくらいの濃い内容を、この一人の男性とここ2ヶ月くらいの間にしてきたのだ。

 ゲームで言えば、経験地がいきなり30倍くらいになった感じ。

 ちょっと、休憩頂戴って心境だった。

 それにまさか、ブーイングをくらうとは思ってなかった。店長の性格から考えて、アッサリと行ってらっしゃいって言ってくれるのではないかと思っていた。

「ほんの3日間じゃないですか」

 私はそう言う。

 なんせ、山神は年末30日まで店を開けるらしいから、それが終わってから31日に実家へ帰るつもりだった。そして1月の1,2と地元でゆっくりとして、3日にはこっちに帰ってくる。

 4日からは山神は開くらしいので、それに間に合うように、そう思っていた。

「ほんの、でなくて、3日も、でしょ~」

「いやいや、店長だって実家に帰るんでしょ?だって片山さんの後片付けは全部終わってないって言ってたし・・・それに親友が亡くなったばかりだったらお母さんも寂しいんじゃないですか?」



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