山神様にお願い


 私が諭すようにそう言うと、ふん、とベッドの上で転がって私に背中を向けてしまった。

 ・・・・・いじけても、私は帰りますけどね。ため息をついてよしよしと店長の頭を撫でる。

「それとも店長はご実家には帰らないんですか?」

「・・・帰るけどー」

「だったらその間私が実家に帰るのは何の問題もないですよね?」

「・・・ないけどー」

 何だ、この面倒臭い生き物は?私は今や巨大な猫と化しているベッドの上の店長を呆れて見ていた。

 男の人って、普段はあんなに男であることや年上であることなんかを誇示しようとするところがあるのに、二人になると、どうしていきなり子供みたいになるのだろうか。・・・謎だわ、ほんと。

 私が思い通りに構ってくれないと諦めたらしく、店長がぶーぶー言うのを止めた。きっと、ならもうちょっと早く帰ってきます、とかの言葉を期待していたに違いない。

 彼はこちらを向いて、改めて聞く。

「それで、シカはいつまでうちの店に入れるんだっけ?」

「あ、2月の中旬までです。卒論は大丈夫と思うので1月は今まで通りに入れますけど、3月からは新入社員の企業研修も始まりますし、それまでに友達と卒業旅行いこうって言ってて」

「あら、忙しそう」

「そうですね~、でも楽しみです」

 私がニコニコとそう言うと、店長が呟いた。


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