山神様にお願い
新年が明けたというのに私はまだケータイをあけていないのだ。
きっと店長から電話やメールが来ているはずなのに。
彼は拗ねているだろう。もしかしたら、何か感じているかもしれない。
「・・・ああ、やだ」
ケータイを忘れるふりをしていたなんて、私ったら。勝手に煮詰まっていたようだ。しかも、それを声に出さずに一人で。
このままでは、彼を失ってしまうかもしれない。
パっと手を離した。
冷たくなった指先を握り締めて、私は小学校に背を向ける。早く早く帰ろう。そして、店長に電話しよう。私は煮詰まって、彼の気持ちを考えることを放棄していた。きっと、この数日間でずっと。
ああ、怒ってなきゃいいけど―――――――――――焦ってバタバタと実家へ戻る。
お帰り~というお父さんに適当に返事をして、ポテチは?と聞く飛鳥に忘れた!と叫んで、私は旅行鞄に駆け寄る。
そしてケータイを引っつかんで、あら、どこ行くの?と聞くお母さんに答えずに家をまた飛び出した。
歩きながら、ケータイを開く。ドキドキしていた。店長からの、メールは――――――――・・・
だけど、何もなかった。
来ていた数件のメールは全て友達からで、新年の挨拶だった。今日行く予定の初詣の待ち合わせ場所などのメールもあった。
だけど、店長からのものは皆無だったのだ。
「え?」