山神様にお願い
あ。と思った。あの野郎、まさか犬に──────────
俺の予感は的中して、チンピラはいきなり足元にいた小型の犬を足蹴りにする。きゃん!と悲鳴が響いて犬が大きくぶっ飛んだ。
「まる!」
彼女の悲鳴が聞こえる。それよりも早く、気がつけば俺は腕をふるっていた。無意識に。
具体的にいえば、足元にあった大きな石をチンピラ目掛けて投げたわけで。
ゴン!
これまた綺麗にバカ男の頭にヒットして─────────男が更に切れた。
うらあああああ!!と叫びながら、俺を捉えて走ってくる。呆然としているだけのヤクザ者と、犬を抱きかかえて座り込んだ女子高生の横を駆け抜けて、頭から血を出した男は俺を目指して突進してきた。
・・・あーあ、仕方ない。
見てるだけのつもりだったのに。
久しぶりに、暴力で対処した。
「そいつの名前、まる?」
「うん。だって初めてみたとき、まるまるとしてたから」
「・・・変な名前」
「うるさいなあ」
夕方になっていた。
暴れるだけ暴れた男を立てないほどにボコボコにして、誰かが呼んだ警察に捕まらないようにとさっさと山から下りてきたのだ。