山神様にお願い


 だけど痛む腹を押さえて走る俺のあとを、彼女が犬を抱いて追いかけてきたのは気がつかなかった。ねえ!と何度か呼ばれてやった気がついた。街を横切って、川原まで来たところだった。

 この子の為にありがとう、そう言ったのだ。全力疾走してきた俺の後をついてきたためにかなり上がった息の下で。

「別に」

 俺はそう言った。犬に当たられたのがムカついたんだって説明はしなかった。動物が好きだなんてこと、女子にはあまり知られたくなかったから。何か可愛い印象でしょ?そんなのご免だ~。

 疲れていたから、そのまま川原で座っていた。すると当然みたいに彼女も横に座ってきた。だから何となく話をしたのだ。

 お前西高だろ?その制服、と指差すと、彼女は驚いたことに呆れた笑い声を上げた。やだ夕波君、って。同じクラスでしょうが!って。

 俺はびっくりして変な顔をしていたと思う。・・・・同じクラス?え、マジで?

「ようやく学校に来ることにしたらしいけど、本当にクラスに興味なかったんだね~」

 そう言って彼女はケラケラと笑う。聞けば、2年生の時に転校してきたらしかった。まだ相当悪かった俺のことは有名だから知っていた。学校ではなく街で見かけたことがよくあった。それで3年は同じクラスになって、そうしたら外見が普通になって教室に来ていたから驚いたよ~、って。あんなに派手でやさぐれた感じだったのに、今では普通で優しそうな外見なんだもん、って。だけど俺はそんな風に監察されている事にすら気がつかなかったわけだ。


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