山神様にお願い


 阪上君は気にせずに、更に一歩近寄る。私は仰け反った。

「店長と板さん?居酒屋の男なんてロクでもないよ。そんな奴らにセンセーがアチコチ弄られてるなんて、許せない」

「いいいいいいやいやいや、弄られてってのはちょっと違うのよ!私にはいい修行になってると思うけど・・・つーか、何調子にのってるの!下がりなさいってば!」

 更に、一歩。彼の8畳の部屋の端っこに座る私の目の前に、既に体の大きくなった阪上君が聳え立っている。

 よく見れば・・・・この子、いつの間に私より背が伸びたんだろう。肩幅も、今気付いたけど、大きくて広くなっている・・・。

 冷や汗が背中を滑り落ちた。

「ねえセンセー。センセーがSでも別に構わないよ。何なら僕は、究極のMにだってなるからさ、ご褒美に、センセーと・・・」

 うっきゃああああああ~!

「境界線境界線!!」

 私は素早くそこら辺に転がしてあったバットを拾い上げて構えた。危ない危ない!素手でこの子に勝てるとは微塵も思わない。これはまさしく貞操の危機ってヤツでは!?

 ・・・せ、正当防衛ってどんな状況でなら言うのかしら・・・。

「ね、ひばりさん」

 阪上君が微笑んだ。薄いその笑顔に私は驚いて目を見開く。・・・何ですか、この色気。一体どこから引き出しましたか、今?

 17歳とは思えない、自分よりもはるかに年上の男性であるかのような錯覚を覚えて眩暈がする。落ち着くのよ、ひばり~!!この子は、この子は、あの、にきび面で膨れていた14歳の男の子と同一人物なんだから~!!


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