山神様にお願い
「・・・ああ、そう」
一瞬で疲れた私がそう返すと、眞子はぎゃあぎゃあ騒ぎ立てる。
その子は誰?何で大学にいたの?小泉とは何で別れたの?やっぱり就活の壁?
私はそれに仕方なく、丁寧~に答えた。
その子は家庭教師先の生徒で、オープンキャンパスで来校していて、ふざけて抱きつかれたの。小泉君が就活でうまくいかなくて全然会えなくて、まあ自然消滅みたいなものよ。って。
『くっそ~!!こーいーずーみーいいいい!!!』
電話の向こうで小泉君とは二言くらいしか話したことのないはずの眞子が怒っている。
げんなりした私は一応聞いた。
「・・・なんで眞子が怒るのよ。仕方ないじゃん、だって」
『仕方なくないでしょう!ひばりは支えてたのに!デートしたいとか、どっか連れていけとか、あんたのことだからそんなワガママは言わなかったんでしょ!?』
「・・・まあね」
でも、と洗濯物を回している乾燥機を眺めながら思った。
ワガママを言っていれば、別れずに済んだのかもしれないって。
私は会いたいのって彼の家に行っていれば。たまには飲みにいこうよって連れ出していれば。手を引っ張って、地団駄踏んで見せていたら。そうしたら。
彼は、あんなに煮詰まらなかったのかもしれないって。
昨日からずっと考えていたのだ。