世界征服狂走論





「そうだよー、なんたって学年のアイドルミニーちゃんだからねぇ」

「武井イミワカラン」

「うん。だから、世界征服」

「日向イミワカラン」



 笑顔のあたしをバッサリ斬ったチカは、またヂュウ、と牛乳を飲む。な、なんてヤツだ!
 きっとあたしが本気だってことを分かってないに違いない。

 すっかり仏頂面になってしまった気の毒なチカ。無愛想なくせに、誰かに嫌われたりするとけっこうヘコむところがある。
 そんなかわいくも気の毒なチカちゃんにコミュニケーションをはかってあげよう。

 さんかく座りをして、空を仰ぎながら。



「もうすぐ夏だよ、チカちゃん」

「…そうだな」

「でも夏休みとか夏期講習だね」

「そうだな」

「あ、でも夏休みの前にあれだ、明後日から期末だ」

「そうだな」

「そのあと球技大会だね、高校生活最後の」

「…そうだな」

「この前 人生最後の体育祭したばっかりなのにね」

「そうだな」

「………あんたいつからイヤホンはめてたの」



 ふと横を向けばウォークマンをいじってるチカが目に入った。……こいつ…



「そうだな」

「だー!! 黙れ黙れえぇえぇえ!!!」

「うおっ!? なんだよ急に! お前が黙れ!」



 プツンとチカの耳からイヤホンを抜いて襲いかかると、やつはあたしの髪を思いきりつかんで止める。

 ……チカちゃん、あたし女の子なんですけど。





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