俺ら参上ッッ!!
「恋一!
ひかりに何飲ませてるんだぼけ!」
「え!?
いや、うまいからコレ!」
恋一は平気な顔で特製コーヒーを飲む。
あ、ありえない…
今にも意識が飛びそうなのに…
「なになに、どうしたの?」
美沙が制服に着替えて戻ってきた。
「あ、いや…実はな、美沙…」
「何これー!
おいしそう!!」
美沙は私の飲みかけのコーヒーを手に取った。
「おいしそうじゃなくて、おいしいんだよ!
飲んでみろって!」
「いただきまーす!」
あ、ダメ!
飲んじゃダメだよ美沙!!
力が入らなくて、声が出なかった。
「やめろ美沙!!
それは…!」
「んっ!?」
玖白の忠告より先に、美沙も飲んでしまった。
目を見開いたまま固まる美沙。
「どーだ?
うまいだろ!」
「……」
バタン
「美沙!?」
青い顔をして美沙は倒れてしまった。
「おい恋一!
それは一生作るな!
犠牲をこれ以上出すな!」
「は!?
オレなんもわりぃことしてねーのに!」
相変わらず平気な顔でコーヒーを飲む恋一。
これは…甘いだけじゃ絶対倒れない…
何か他に入ってる…
「こう…いち」
「どしたー??」
「他に…何か入れた?」
うーんと恋一は考える。
「……あ!
思い出した!!」
「他にも何か入ってるのか!?」
美沙を抱きとめながら、玖白は驚いた。
「大福!!
あとオレンジも入れたはずだ!」
「「……え」」
玖白と声が重なる。
「ばかだろお前!
正真正銘、疑いようもないばかだ!」
「そこまで言わなくたっていいだろ!」
あぁ…目眩がひどくなる…
もうコーヒーじゃないよ、恋一…
「飲まなくて良かった…
ほんとのコーヒーを飲んでくる」
呆れた顔で玖白はコーヒーを取りに行った。
「なんだよーみんなして。
うまいのになー…」
恋一が悩んでいた時に事件は起きた。
「ぐわぁぁあああああああ!!!!!」
「なんじゃこりゃあああああ!!!!!」
奥の部屋からうめき声が聞こえた。
「な、なんだ!?」
「何が起きたの!?」
私と恋一がおどおどしていた時、床を這いずりながら玖白がこっちへ向かってきた。
「ど、どどどどうしたの!?」
「玖白、大丈夫か!?」
「ぐぅ…」
苦しそうな顔でなんとか起き上がる玖白。
「おい恋一…」
「ど、どうした!!」
「お前…何か言わなきゃなんねぇことがあるだろ…??」
「へ?」
玖白は殺気のオーラに包まれていて、目付きも変わっていた。
「な、何にもないんすけど…」
「あほかお前はぁぁああああああああ!!!!」
グシッ
玖白はおもいっきり恋一を殴った。
「な、なんだよ!?」
「お前…ポットに入ってたコーヒー全部に混ぜただろ…いろいろ!!」
「あ…そーいやそーだった気が…」
「おもいっきり飲んじまっただろうが!!
他のやつらも倒れてんだぞ!!」
あ、さっきのうめき声は…
みんなも、玖白まで恋一のコーヒーの犠牲に…
玖白はすっかり口調も変わっていて、今にも吐きそうな顔をしていた。
「俺甘いの苦手なの知ってるだろ…
無糖じゃなきゃ飲めない俺が…恋ーの作ったコーヒーなんて飲める…わ…け…」
バタン
「玖白!?」
とうとう玖白まで倒れてしまった。
あぁ…怖いよ。
恋ーがここまで味音痴だなんて…
相当恐ろしい恋一特製コーヒーであった。