二重人格神様~金と碧の王~
「お前が、好きだ」
「あ…は、はい…そう、なんですか…って、ええっ!?」
な、何を言っているの!?
突然の告白に驚いたのは私だけじゃない。周りいる皆も目を大きく見開き私達を交互に見る。
「あ、あの…え…え…えっと」
「なんだよ。悪いのか。仕方がないだろ、海鈴がお前のこと好きなんだ。重なる部分を持つ俺が、お前を気になる
のは当たり前なんだよ」
「は、はいっ」
「だから、もういい。俺は俺の為に、その温もりが欲しい。海鈴のものとかどうでもいい」
「あの、グレンっ」
身体を引き寄せられ、そのまま抱きしめられる。力強い腕が背中に回り逃げ場はない。
グレンさんの胸…凄くドキドキしている。私と同じくらい、早い。
熱い温度にてらされ、私もグレンさんの背中に手を回す。服を握りしめ抱き付くように縋れば胸の奥が暖かくなる。
「グレンさん…」
背中にあった手が顎と肩に置かれ、少し距離をおき見つめ合う。引き寄せ合うように唇を重ねると、ゴツンと額がぶつかる。
「信じてやるよ。あの言葉」
「…え?」
「いのりは、俺の味方だって」
「…あ、んっ」
グレンさんの唇がまた触れる。いま、私の名前を呼んでくれた…初めてだ。グレンさんが私の名前を呼んだの…
嬉しいと思った。名前を呼ばれて嬉しいと、初めておもった。お前とか、おい!とかばかりだったのに…
色々な事が嬉しくて、胸がくすぐったくて、次第に深くなっていくキスに自らも答える。
苦しくても、まだ、触れていたくて、離されたくない。まるで、あの時のキスを連想させるようなキス。
もっと、触れたい。もっと、奥まで触れたい。身体が疼き、その痺れに耐えられなくなると、唇が離れ一気に酸素が体内に流れ込む。
「はぁっ」
息をつく間もなく、グレンさんの唇が首筋にふれ、私は思わずそれを受け入れようと…思った。そう、思った…時だった。
「あの、そのような事は、御部屋でして頂けないでしょうか?邪魔は致しません…ので」
「…え」
目を開けると、そこには困った顔のアレスと部下達。
「……あ」
そ、そうだ!わ、わたし、何をしているの!!
一瞬で我に返り、慌てて距離をとるのも時は既に遅し。
なんて、ことだ!顔に熱が立ち上がり、もう終わったと思った。
突然、好きだと言われ、キスされ、アレス達の存在を忘れていた。
顔をあげるのも恐ろしかったが、小さくなるいのりをみんなは微笑ましい顔で見ていたことに気づかなかった。
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