[完]バスケ王子に恋をして。
_____それから春樹と海斗の1対1のプレーを見ていると初めて春樹のバスケを見た時を思い出した。

あの時は春樹と海斗しか残ってなくて……一年生なのにってびっくりしちゃったよ……。

でも……このプレーを見るのも……最後なんだね……

私はいままでの海斗とやってきたバスケの事を振り返っていると自然と涙が出てきた。

海斗に言いたいことがたくさんある……!!

早く……伝えないと……!!

そう思った瞬間……

ーピーッ

全部の試合が終わった。

結果は春樹達のチームがギリギリ勝った。

そして私は立ち上がり走り出した。

「ちょっと奈未ちゃんどこ行くの!?」

友絵ちゃんの焦った声が聞こえる。

「お兄ちゃんなら事情知ってるからお兄ちゃんに聞いて!!私ちょっと行かないといけないところがあるから行ってきます!!」

そう言い残して私は裏口まで走った。

海斗の待ち合わせの場所は……!!

辿り着いた時にはもう海斗がそこに座っていた。

「え……?早くない……?」
「どうせこの後春樹に会うんだろ?なら早いほうがいいと思って監督に言って出させてもらった」
「そっか……」

私はゆっくりと海斗の横に座る。

「私……海斗とバスケできてよかったよ」
「……え?」
「海斗の練習……ずーっと見ててバスケって楽しいんだなって思ったし海斗の足にテーピングたくさん巻いたからマネージャーにだってなれたんだと思う」
「そーだな……」
「私……海斗からバスケ取ったら……何も残らないんじゃないかなって思う……」

私はそこまで言って泣き出してしまった。

「何で泣くんだよ……」
「だって……だって……」
「俺はもういいんだ……。確かに靭帯やられてるって聞いた時はもうダメだと思った。けどな……俺にも向いてる職業があったんだよ」
「え……?」
「バスケのコーチ。しかもキングバードの」
「……へ!?」

キングバードって春樹のいたところ……。

「もう決定してるんだ……俺なんかが教えんのかなーなんて思ってたら春樹がお前ならその技術を残せるって言われてさ……やってみようって思った」
「そっか……」
「まぁ……やってみなきゃわかんねーぞ?本当に。クソガキばっかりいるし」

海斗だって十分クソガキでしょうが……。

「でも……俺は残したいんだ……俺のバスケを……だから……俺はコーチになる」

海斗の目は真っ直ぐ前を向いていた。

「うん……頑張れ!!……あとごめんね?あんな言い方しちゃって……」

思わず下を向く。

「あぁ……俺だって悪いんだ……奈未のせいじゃない……ごめん」
「ううん……私ね?自分から逃げてたの……ただ強くなるとか言って春樹向き合いたくなくて逃げての……でも……もうやめたんだ……私はたくさんの人に支えられて生きてるから」

私は海斗を見て最高の笑顔で笑った。

「あぁ……NANAとしても頑張れよ?」
「うん……ありがと!!」
「それとさ……言おうと思ってたんだけど……」

そこまで言って海斗が黙り込む。

「何?どうかしたの?」
「いや……実は俺……彼女いてさ……」

一気に顔が赤くなる海斗。

「え!?嘘!?誰!?どんな子!?写メ見せて!!」
「いや……奈未の知ってる人で……」
「え!?そうなの!?誰!?」
「……咲羅……」

……え……!?

「え!?咲羅!?初耳なんだけど!!何それ!!いつから?」
「高校卒業する時から……咲羅が卒業式の時俺に可哀想だからって咲羅がデザインしたネックレスくれたんだ……それから気になって……」

海斗の胸元にはキラキラと光っているシルバーの靴型のネックレスが掛かっていた。

「へー……詳しい話は後で咲羅から聞くわ」
「あぁ……だからもう安心しろ……奈未と春樹を引き裂こうなんてしないから」
「うん……ってかさ……」

私は海斗の顔をジーッと見る。

「なんだよ」
「春樹のこと赤織から春樹に変えたんだね!!仲良しー♪」
「な///うるせーよ!!早くしねーと春樹出てくるぞ!!」
「あ、ヤバッ!!じゃあね、海斗!!また今度!!」

そういって私は走り出した。

私の会いたかった……喋りたかった……抱きつきたかった……笑いたかった……あなたに会いに行くね?

ずっと待たせてごめん……!!

私強くなったから……今会いに行くよ!!

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