幕末の神様〜桜まといし龍の姫〜
玄関の門のあたりでは、あぐりが佐々木の帰りを今か今かと待っていた。
譲は二人の邪魔をしないように、こちらとあぐりを見比べる佐々木にこくりと頷いて、顎であぐりを指すと、行くように合図した。
佐々木は礼儀正しくも一礼をしてから、足早にあぐりのもとへ駆けて行った。
お互いに照れあい、仲睦まじい様子を見せる二人の雰囲気に飲まれぬように、譲は遠くからとの様子を見つめていた。
そして少し……羨望の念を抱いていた。
もし……あの日、家族を失わなければ、自分はああして幸せにいられたのだろうか。
刀を振るわず、ただの幸せな娘として生きられたのだろうか。
そして、誰かを好きになったり、恋心を抱いたりしていたのだろうか。
譲は首を振る。
(私は……幸せだわ)
近藤さんがいて、土方さんがいて、総司や平助、左乃さんや新八さん、斎藤くん………、みんながいるから、自分はここに在れる。
その幸せは、普通の形ではないとしても、でも自分は確かに幸福だ。
なのに……、なんだろう。この切ない思いは。
胸の中で渦巻く妙な感覚に、譲は胸にそっと手を当てる。
(これは……)
知ってる。この感覚。これは、孤独の感覚。
もう忘れていたと思っていたもの。
譲は複雑な表情で、二人を影から見守っていた。