<短編>夢への片道切符
「いつものやつ、持ってきました」

私は店員の声に驚いてしまった。自分の世界に入っていたからなのかその人の気配を感じ取れなかった。

「お嬢ちゃん、これがいつものだよ」
老人は少しさびしげな顔をして‘いつもの物’を私の目の前に置いた。

「飴玉・・・ですか?」
目の前に置かれたのは、どこか懐かしい気分にしてくれる飴玉だった。

飴玉って言ってものど飴とかじゃなく、駄菓子屋に置いてあるような子ども心をくすぐるキラキラした飴玉だった。

「これはね、私にとってはとっても思い出深いものなんだ。お嬢ちゃん、君には大切な人はいるかい?」

老人は優しくしかしどこか寂しそうな目をして私に問いかけてきた。

「大切な人・・・います。でもその人と喧嘩して最近は全然連絡とってませんけどね」

そう、その大切な人のおかげで今の私はいる。でもいつも私は彼と喧嘩してしまう。
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