ama-oto
 「それでいいのか?」

 たぶん、いいわけない。

 清人の目を見て「いいわけない」って言えるか。

 片づいた部屋が、虚しい気持ちを増幅させた。たぶん、どこかで無理をしていた。いろんな意味で無理をしていた。それがはっきり目の前に現われただけの話だった。ドアを閉めて、ため息をついた。靴を脱いで、適当に鞄を置いて、床に座り込んだ。

 私は今日1日何をしたのだろう。生産性の全く無い、ただただひたすらに無駄な1日。1日の間に膨らんだ、虚しい気持ちの塊の前で、何もしたくなくなった。箍が外れたように、涙が出てきた。あとからあとからとめどもなく、涙がボロボロとこぼれた。外にいるあいだは蓋をしていた感情が、部屋のドアを閉めた瞬間、音を立てて外れて飛んでいった。

 心配そうな清人の声が本当は心の底から嬉しかった。心のどこかで分かっていた現実を目にして、優しさを信じることができなかった。涙が止まらなかった。窓の外から街灯と月明かりが混じって部屋に入り込んでいた。

 座っているのが億劫になり、床にそのまま横になった。冷たいフローリングの感触がさみしい気持ちを呼んできた。

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