恐怖短編集
それも、自分が美由紀に会うことが怖くて迷っているのが原因で。


「美由紀」


東夜は部屋の中へ一歩足を踏み入れた。


しかし、先ほどのような嫌な視線は全くない。


それ所か、やはり自分に気づいていない様子なのだ。



母親が美由紀に薬を飲ませると、散らばった物を定位置に戻し始めた。


疲れているのか、知らず知らずの内に何度もため息の音が聞こえた。



「美由紀、花の水を変えてくるわね」



母親はそう言うと、花瓶を持って部屋を出る。



東夜はそれを見送ってから、ベッドの隣に座った。


と、言っても美由紀に自分の姿は見えていないようだし、話しをしたくても声も届かない。



東夜はただ無言で美由紀の頭を撫でていた。


「お兄ちゃんのバカ」

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