恐怖短編集
「わからねぇけど、東夜だってこの中に入ってんだぞ」



少し強い口調になる孝に茂はフンと鼻を鳴らして「だからなんだよ」と肩をすくめた。



「……俺は、やっぱり病院の中に入ってみる」



孝の言葉に茂は眉を寄せ、それから「好きにしろ」と吐き捨てるように言うと再び歩き始めた。


孝は茂の後姿を見送ってから、その病院へと向かった。


普通に、院内へと足を踏み入れる。


しかし、東夜の時のような嫌な感じはしなかった。


視線も感じないし、看護婦や患者も孝を見ない。


ただ、一つ気になったのは、やはり一箇所だけ開いた長いすだった。


まるで、皆がそこを見てはいけない物のように、視線をそらしながら通り過ぎる。
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