恐怖短編集
孝は疑問に思いながら、その長いすへと向かった。


別に、何の代わりもない長いす。



孝はそこに座ろうとして……、初めて視線を感じた。


どこからともなく、ジッと見られている感覚。


でも、それは患者や看護婦から伝わってくる視線ではなかった。


それよりもずっと近くに感じる視線は、あの長いすから感じられたのだ。


孝は不気味さを感じ、パッとその場を離れた。


その時、聞きなれた声が聞こえてきた。


「東夜?」


孝はそう呟き、声のする方へ進む。


しかし、その声が近くなるにつれ、叫び声に近い泣き声だと分かる。


「東夜、どうした!?」

人目から隠れるようにして隅の方に座っているのは、間違いなく東夜だった。
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