恐怖短編集
東夜の声が震える。


誰もいなくなった院内、茂は美由紀の体にペットボトルに入った液体をかけ始めた。


そして、それを見ている病院の委員長。


異様な空気が辺りを包む。


その液体が灯油だと気づくのはすぐだった。


ツンと鼻をつく匂いに東夜と孝は顔をしかめた。


「院内で自殺者なんて縁起でもない」


茂は軽く声を立てて笑いながらそう言った。


まるで、壊れた人形ような表情だ。


「火事と一緒に燃やしてしまえ。どうせこの土地は売り払って新しい病院を建てるんだ」


院長はそう言い、徐々に上がってきた室温に顔をゆがめる。


でも、まだ火はここまで来ていないし、出入り口もふさがれていない。


茂は面白そうに美由紀の体を見詰めていたと思うと、やがてそれも飽きたのか、マッチに火をつけ、それを躊躇する事なく美由紀の体に投げ捨てた。


一瞬にして燃え広がる炎。
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