恐怖短編集
「東夜、逃げよう!」


孝が東夜を引きずるようにして外へ出た。


すると、次の瞬間今までの事が嘘だったかのように辺りに静けさが戻る。


東夜はその場にじゃが見込み、今見た悪夢を必死に消そうとする。


「大丈夫か?」


掛ける言葉が見つからず、孝が同じようにしゃがみ込む。


あの長いすは皆が美由紀のために場所を空けていたのだ。


美由紀の死に場所のために。


東夜は血が出るほどに強く唇を噛み、怒りに身を振るわせる。


茂が何故あの病院と関係していたのか、そんな事どうでもよかった。


まるで人形のように簡単に、人の妹を燃やしてしまった茂に怒りを感じない人間などいるだろうか。


そんなの神様ですら許さないだろう。



「罰ゲームはお楽しみいただけたかな?」


陽気な口調で言ったのは、いつの間にか近くにたっていた茂だった。


「茂……」


東夜と孝が茂を見上げる。
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