恐怖短編集
季節は春で、河川敷の桜の木の下を歩くにはもってこいだったのだ。


その川の近くには憧れの高校へと続く線路が走っていて、散歩をしながら娘に話しかける私の声は、時折電車の音に掻き消されて行った。


「ぱぱ」


危なっかしい足元で歩くわが子が、一言、そう言った。


「ぱぱ、ここにはいないよ。お仕事だよ」


私がそう言っても、「ぱぱ」「ぱぱ」と繰り返す。


疑問に思い、娘が見つめるその先へ、視線を移した。
< 40 / 349 >

この作品をシェア

pagetop