*ミーくんの好きなひと*
振り返ると、向こう側から彼が歩いてきていた。
「ミーくん!」
手を振る私につられるように茶髪男が振り返る。
彼の姿を認めると「ちっ」と舌打ちをこぼして去っていった。
当然だ。
ミーくんはその辺の男なんか目じゃないくらいカッコいい。
「今日は時間通りだね、ミーくん」
駆け寄る私に、彼は形のいい眉をひそめる。
「その呼び方、やめてくれよ」
「なんでぇ?」
「猫みてー」
ミーくんは私がつけたあだ名を嫌がるけど、しつこく呼んでも怒ることはない。
「どこ行きたい?」
ナンパ男のことを見ていたはずなのに、嫉妬したり心配したりする素振りも見せずに今日の予定を聞いてくる。
気にもしてないって感じで、ちょっとつまらないけど……、
デートを思いっきり楽しみたいから、小さな文句は言わないことにしてる。