ほどよいあとさき


にっこりと笑う顔にはどこか不安定な感情が見え隠れしている。

もともと整った顔が、さらに魅力的にも見える。

165センチだという身長プラス、ハイヒール。

170センチは超えているその見た目はまさにモデル仕様。

姿勢のいい立ち姿は思わず見惚れるほどだ。

「椎名くんはね、仕事もそうだけど、プライベートでも気が長いのよ。
自分が望むものを手に入れる為には努力を惜しまないし時間もかける。
一旦手放すことだって気にしないの。
あ、神田さんだって、椎名くんと付き合ってたんだからそれくらいわかってるわよね?」

「あ……あの」

「彼はああ見えて、一途なのよ。……それは、今更私が言わなくてもわかってるわよね……」

どこか不安げに話す夏乃さんの言葉は私の心にぐさりと刺さるようで、胸が痛い。

椎名主任と付き合っていた私を牽制するつもりなのかな……。

そんな必要なんてないのに、と思い、同時に気が滅入る。

歩は、夏乃さんと一度は付き合って、別れたけれど、結局は夏乃さんの暴挙に屈して、そして会社への恩義を振り切ることができなくて、私との別れを選んだ。

そう決断したのは歩だ。


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