XXX、ベリーズ辞めるってよ
言葉で人を斬るだなんてことは可能なのだろうか、しかしあたりまえのようにそのことを話す男の顔には妙な説得力があった。

「だったら、おさむらいさん、ここ最近に起きている大きな騒ぎを、斬って欲しいのですが」

と、身なりの綺麗な女の人は男に近づきながら言った。

「へ? 大きな騒ぎ? なんですか?」

「それはそれは大きな騒ぎで……国がなくなるかもしれないとあちこちで、もう、

今はその話題で持ちきりなんですよ? 私も引っ越ししようかなーとか。

……あら、まさか、知らないとか?」

と、からかうように。

刀を持たない間の抜けた侍と話す自分を含め、本当に馬鹿馬鹿しい。なにを期待していたのだろうか。

「国が?」

間抜けな顔をして侍。

「なくなる」

と、意地悪な顔でそう頷くと侍の顔からは血の気が一気に引いたように青ざめていった。

のろのろと年寄りのような動作で抱いていた犬をおろし、膝関節をポキポキと鳴らしながら侍はゆっくりと立ち上がった。


「あのね、やですよ、関わり合いたくないですよ。国がなくなる? ええ? 冗談じゃないですよ。そんなの関わり損ですよ、そんなの。無理ですよ、無理」

「無理ってなんですか。なんでも斬れると、さっきおっしゃったじゃないですか」

「いいましたけどね。そんなのね、いったいね、あっしになんの得が、いえ、損得では動かない事で有名なんですよ。あっしはね、目先のね」

と、びびり、うろたえながら話す。

その言葉を遮るようにして女は耳元に唇を近づけて囁いた。

「おさむらいさん、今書けば、きっとPVがすごい事になりますよ」と。

侍の顔がパァッと、花が咲いたような感じになりました。(※リスペクトです)

「なにか……のっぴきならねぇ事情でも、おありのようですね。 チカラになれるかどうかはわかりませんが、まぁ、あっしも男だ。

詳しく事情を聞かせてもらえやしませんか?」

女は、ゆっくりと座り込む男に顛末を語り出した。

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