てのひらを、ぎゅっと。


急に、白い世界と蝶々の景色が消えた。


変わりに見えたのは、朝、いつも目覚めた時に見る光景だった。


ただ、いつもとは違って………かなり騒がしいけれど。


「こ、うちゃん…………っ?」

「心優!?心優!?心優!」


……………あれ?わ、たし……。


「心優!俺だ!分かるか!?」


こうちゃんが必死に叫んでる。


コクン、と一回だけ頷く。


私の口元には、ドラマとかでよく見る透明の呼吸器がつけられていて、体中至るところが太い管でつながれている。


周りを見ると、たくさんの人が人目を気にせず涙を流していた。


その姿を見て、苦しくなる。


“泣かないで”


そう伝えたいのに、自分もなぜか泣けてきて上手く言葉にならない。


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