てのひらを、ぎゅっと。
今、30歳を迎えた俺の隣で美味しそうにカレーをほおばっている希衣を見て思う。
…………ごめんな。
あの頃の俺は、大人になったつもりでまだ大人になりきれてなくて。
何度も何度も希衣を傷つけたな。
俺を好きだと言ってくれたお前を、俺をまっすぐに想ってくれていたお前を、何度も泣かせた。
でも、希衣はそこらのコンクリートから顔を出す花たちよりも断然に強かったよな。
“また心優と付き合う”
固く決意した身勝手な俺の背中を押してくれたのは、希衣だった。