てのひらを、ぎゅっと。


「ねぇ…………こうちゃん……」


ごめんなさい。


今まで大切にしてくれてたのに、ごめんなさい。


「もう………別れよう…」


私はどんどん早口に言葉をつなげていく。


「こうちゃんのこと、もう好きじゃないの」

「は………?心優?急になんだよ…」


ごめんなさい、こうちゃん。


傷ついて、傷ついて。


私のこと、嫌いになって。


「急じゃないよ。私、他に好きな人ができたの」

「う、そだろ………?」


いつも笑っているこうちゃん。


笑顔を絶やさないこうちゃん。


周りの人まで笑顔にしてしまうくらいの魅力を持っている、こうちゃん。


けど、今日のこうちゃんは違う。


こうちゃんは、男の子のものとは思えないほどキレイで純粋な涙を流していた。


初めて見たキレイなその泣き顔に、私は思わず言葉に詰まってしまう。


抱きしめたい。


真っ正面から、抱きつきたい。


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