魅惑のハニーリップ
「大丈夫? 気分悪い?」

「大丈夫です。……頭が重いだけですから」

「じゃあ、俺にもたれていいよ。ほら」

 腕をやさしく引かれて体勢が崩れ、宇田さんの肩にしなだれかかる形になった。

「あ、でも……」

「いいから。着くまでそうしてなよ」

 反対側の手で、頭をポンポンと撫でられた。
 そんな風にされたら、もたれかかっている肩にしっかりと甘えたくなってしまった。

 宇田さんのスーツからは居酒屋で付いた臭いがするけれど、そんなのは全然気にならないくらい心地いい。
 もうずっとこうしていたいくらいだ。

 なのに、静かなタクシーの車内に、スマホの着信が鳴り響いた。
 それは私のバッグの中で鳴っている、メッセージの着信だ。
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