魅惑のハニーリップ
「千秋は? 今、付き合ってる人いるの?」

「今はいなーい。だってね、最近忙しすぎるんだよ」

「そうなの?」

「うん。彼氏とか作ってるヒマはないって感じ」

 千秋は大袈裟に、はぁ~っと冗談ぽく溜め息をついて見せる。
 お茶目なところは以前と全然変わってないから、それだけでホッとする。
 こういう天真爛漫なところがあるから、千秋とは昔から気が合うのだと実感した。

「ねぇ、遥ぁ……仕事楽しい?」

「?……どうしたの?」

「うん、今日は実はその話なんだ」

 楽しくて忘れていたけれど……
 久しく会ってなかったから、ただ会ってご飯を食べようって、今日はそれだけじゃなかったのだ。
 千秋は、なにか話があると言っていたから。

 だけど、仕事が楽しいか……なんて突然訊いてきたりして、いったいなんの話だろう?

「仕事は、まぁ楽しいかな。嫌な人がいたり、そういうのは全然ないし」

「そっかぁ~」

 千秋の声のトーンが少し沈んだのは、私の思い過ごしではないと思う。

「千秋、言ってよ。どうしたの?」

「うん。実はね……私の仕事のことなの」

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