魅惑のハニーリップ
「で? 遥はどうしたいの?」

 話し終わったら、優子の先制パンチが飛んでくる。

「すぐに決められないよね?」

 あとから佐那子さんがやさしくフォローしてくれた。

「ショップで働くってことは、もちろんこの会社も辞めるってことですしね。ここは土日祝日がお休みでしたけど、転職したらまるっきり逆になるでしょうし」

 だいたい小売業は、土日は確実に出勤だと思う。
 そうなると、今の生活もガラリと変わってしまうってことだ。

「宇田さんも出張とか休日出勤とかいろいろありますけど、基本的に土日祝がお休みなら、そこは私と時間が合わせられるところなんです。でも……私が転職してしまうと……」

「聖二と会う時間が確実に減っちゃうよね」

「はい」

「そっか。その部分で遥ちゃんは悩んでるのか」

 佐那子さんが苦笑いで私の頭の上に手をポンポンと置いた。
 平日には宇田さんが私の部屋に少し寄ってくれるけれど、一緒に食事なんてする時間はない。
 休日になってようやくゆっくりと会えるのに。

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