魅惑のハニーリップ
『今日、和久井と会うんだって?』

「え?」

『アイツとデートだって聞いた』

「あ……はい……」

 宇田さんがどうしてそれを知ってるのだろう。
 あぁ、きっと優子だ。
 優子がなにかの拍子に言ってしまったのだと思う。
 別に口止めしていたわけじゃないから。
 そのときに、優子に私の番号を聞いたのかもしれない。

『まだ、和久井と会えてないんだろ?』

「はい……」

 どうしてそこまでわかるのか不思議だったけれど、宇田さんは和久井さんと同じ営業部だし、今日の仕事の状況を把握しているのかも。

『今日、やめてくれないかな?』

「へ? なにをですか?」

『なにをって……和久井とのデートだよ』

「………」

 なぜかわからないけれど、胸のドキドキが止まらない。

 宇田さんは電話の向こうにいて、もちろん顔は見えない。
 なのに、それは真剣な表情で言っているように聞こえたから。

 和久井さんとのデートをとりやめろって……


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