魅惑のハニーリップ
 それを聞いた瞬間、息が止まるかと思った。

 なにかの間違いじゃないだろうか。
 私はついさっき宇田さんと電話で話したばかりだ。
『会社で俺を待っててよ』って、言ってくれたもの。
 だからこれから会社に戻るところだったのに。

 ……交通事故?
 なぜそんなことになっているのか、さっぱりわからない。

「そんなわけないよ! だって、さっき電話したもん」

『本当だって! 今救急車で運ばれたって、営業部の人たち騒いでたよ!』

「う、嘘………」

 スマホを持っていた手が震えてきて、だんだん声が出なくなってくる。

『とにかく伝えたからね! 後悔のないようにしなよ?』

「……うん」

 そのまま優子との電話を切った。
 まだ、スマホを持つ手は震えている。

 本当に……本当に宇田さんが事故に?

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