魅惑のハニーリップ
 私は……宇田さんが好きなんだ。
 自分では気づかないフリをしていただけだったのかもしれない。

 宇田さんは佐那子さんが好きなんだから…って。
 自分の気持ちに蓋をして、閉じ込めいたのだ。

 でも今は、宇田さんが誰を好きでも関係なくて。
 私の気持ちははっきりしている。……宇田さんが好き。

「なんかあったの?」

 電話や私の様子から、和久井さんが心配そうに声をかけてくれた。

「宇田さんが……交通事故にあったそうです」

「え?!」

「ごめんなさい……私、行かなきゃ!」

「やっぱ好きなんだね。ったく、あの先輩は全部おいしいとこ持っていくな。仕事も恋愛も」

 和久井さんが最後に静かに呟いた言葉も、今の私にはなんとなくしか耳に届いてこない。

 だって、宇田さんが………
 宇田さんが無事なのか、それだけが心配でたまらない。

 私は走り出していた。
 頭は真っ白のまま、無我夢中で。

 宇田さんが運ばれたであろう救急病院に向かって。
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