魅惑のハニーリップ
「これ、どうしたんですか?」

「えっと……病院の前にケーキ屋あるの、知ってる?」

「……?」

「なんか甘いもん見ると、遥ちゃんが頭に浮かんでくるんだよね」

 それは『甘いもの=私』というイメージなのだろう。

 それでもうれしいかな。
 宇田さんに気にしてもらえるのならば。

 やっぱり、好きな人に考えてもらえるのはうれしいよ。

「それ、エクレアなんだ。優子ちゃんと食べてよ」

「あ、ありがとうございます」

 そんな私たちのやりとりを、優子が見逃すわけもない。

「私、三人分のお弁当を買ってきますよ! 宇田さんも一緒にお昼食べましょ?!」

「え……ああ」

 戸惑った宇田さんの返事を聞いた途端、優子は財布を持って笑顔で走り出すように事務所を出て行った。
 同じように事務所内にいたほかの人も外出して、私たちは自然とふたりきりになる。
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