魅惑のハニーリップ
「俺がここで昼飯なんて食ってていいのかな」

 優子に強引に押し切られて、ちょっと困ってる宇田さんが可愛く見え、思わずクスっと笑ってしまう。

「あのさ、ごめんね。バタバタしてるからゆっくり会う時間もなくて」

「……いえ。宇田さんは仕事忙しいって、ちゃんと理解していますから」

 私だって子どもじゃない。
 そんなことでワガママを言うような年はもうとっくに過ぎたと思っている。
 会いたいのだって、少しくらいなら我慢できる。

「俺と会えなくても寂しくないの?」

 そんなことを聞く宇田さんは……意地悪だ。

 彼氏と会えなくて、寂しくないわけがないもの。
 しかも付き合い始めたばかりなのだから。

「なんで黙ってるの? 俺…ちょっとショックなんだけど」

 少しうなだれながら後頭部をポリポリと掻く宇田さんを見て、ふと我に返る。
 黙りこんでいたせいで、なにか誤解させてしまったのかもしれない。
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