魅惑のハニーリップ
 お昼休みになる少し前、携帯に宇田さんからメッセージが来た。

『昼休み、社内にいる?』

 どうしてそんなことを聞くのか、意図がわからなかったけれど。
 今日は優子と何か買ってきて社内で食べようと話してたから、お昼は外出しない旨の返信を短く宇田さんに返した。
 するとお昼休みになってすぐ、宇田さんがうちの販売促進部に姿を現した。

「お、いたいた!」

 私たちの関係がまるでなんでもないかのように、宇田さんはいつも通り颯爽と私のデスクまでやってきた。

 私ならニヤニヤとハニかんでしまいそうだけれど……
 宇田さんは至って普通にしていて、私と付き合ってるような素振りは一切出ていない。

 わざと自然体を装っているのか、それが本当に自然なのかは不明だ。

「宇田さん! 怪我大丈夫ですか?!」

 私より先に隣の席の優子が駆け寄って声をかける。

「ありがと。大丈夫だよ」

 照れたように笑いながら、宇田さんは優子と軽く挨拶を交わす。
 そして、私のいるデスクの上に何気なくポンと袋を置いた。
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