魅惑のハニーリップ
「遥ちゃんの存在が、仕事の疲れを癒してくれてる」

 そこだけは冗談っぽくなくて、真剣な表情をして宇田さんは言ってくれる。

「私……なにもしてないですよ」

 宇田さんを癒してあげられるようなことは、なにもできてはいないと思う。
 彼の力になりたいのはやまやまだけれど……私にはなにも力になってあげられない。

「それでいいんだよ。遥ちゃんはいてくれるだけでいい。俺は顔を見て話をするだけで癒されるんだから」

 思わず、今すぐ宇田さんに抱きつきたい衝動にかられた。
 そんな風に思ってくれていることがうれしくて、その胸に飛び込んでしまいたい。

 でもさすがにここは出張先だし……
 抱きつくことは、寸でのところでなんとか我慢した。

「休憩室に昼の弁当が届いてるから食べてきて。早くしないと休憩時間が終わっちゃうよ」

「あ、はい……」

 にっこり笑う宇田さんに、私も微笑みを返す。
 すると宇田さんの顔が一気に近づいてきて、おでこに軽くキスが降ってきた。

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