魅惑のハニーリップ
「ヤバいな。今、我慢できなかった」

 おでこではあるけれども、キスなんて。
 そんな大胆なことをしてしまってから、辺りをキョロキョロと気にする宇田さんがなんとなくかわいい。

 仕事ではいつも鋭く先読みして抜かりのない宇田さんが、プライベートではまったく違う一面を見せたりする。

「ここではマズいですよ」

「はは。悪い。……この仕事が済んだらさ、忙しさはマシになるから」

「……はい」

「ちゃんと遥ちゃんと会う時間を作れる。いつもごめんな。まともにデートもできなくて……俺と会えずに、寂しかったりする?」

「いえ……大丈夫です。仕事ですもん。わかってますから」

 私が無理やりに愛想笑いを浮かべると、宇田さんからは『はぁ~』という、げんなりした溜め息が返って来た。

 溜め息だけじゃなく、ぐったりとうなだれるように、宇田さんは頭を下にもたげる。


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