狼系王子とナイショの社内恋愛


「私の名前、友達に聞いたんですか?」

結城さんは会社のちょっとした有名人だから私でも知っていたけど、私はごくごく普通の、それか少し地味目のただの一社員。
同じ課になった事がある人以外はきっと私の名前なんて知らないハズだ。

だから、志穂が言ったのかなと思って聞いたけれど、結城さんが首を振る。

「いえ、前から知ってましたけど。
総務課の高橋碧衣さん」

フルネームを微笑みながら言われて驚いていると、結城さんが続ける。

「実はずっと話してみたかったんです」
「なんで――」

聞き返そうとした時。
結城さんの後ろを通りかかった人に気づいて、声を失った。

固まって見つめすぎたからか、その人も私に気づいて……そして同じように驚いた顔を浮かべる。

「高橋さん?」

結城さんの声にハっとすると、結城さんが私の視線を追って振り返るところで。
慌てて止めようとしたけど、もう間に合わなかった。

結城さんが、立ち止まっている人物を見上げる。
そしてすぐにそれが誰か気づいたらしく、立ち上がった。





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