狼系王子とナイショの社内恋愛


「それもありますけど、今まで噂になった女性社員と本当に付き合ってたのかとか。
たくさん恋愛ネタ持ってそうだから、恋愛系の話楽しそうじゃないですか。
あれだけ色んな人と噂になってる人ってそうそういないですもん」
「……まぁ、そうかもね」
「なのに逃げられちゃって、もう落ち込むしかないじゃないですかー」

はぁ、とため息をついた金子さんが、A定食の生姜焼きを箸でつつく。

「でも、途中抜けてどこ行っちゃったんだろう、結城さん……」

さぁ、とだけ答えると、金子さんは少し黙った後、ぐるっと私の方を向いた。

「そういえば、先輩も一次会で帰ってましたよね?!
結城さん、見かけたりしませんでした?」
「えっ……どうだろ。私はそのまま帰っただけだし」
「……もしかして結城さん、先輩と一緒でした?」
「なんで? 私はそのまま帰ったって言ってるでしょ」

なんでこの子こんなに鋭いの、と思いながら目を逸らす。
じっと観察してくる金子さんに、バレるんじゃないかとドキドキしながらご飯を無理やり口に詰め込む。

その間も金子さんの視線は私に止まったままで。


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