狼系王子とナイショの社内恋愛
「別に大した理由じゃないですよ。
大学の時、同じサークルに大人しい女の先輩がいたんです。
テニスサークルで他のやつらは割と騒がしいタイプが多かったから、その子はよく目立ってた」
結城さんは、テーブルの上にあるコーヒーを眺めながら話す。
「その人結構ひとりでいる事が多かったから、なんとなく気になって話しかけたりするうちに、向こうからも普通に話しかけてくれるようになったんです。
お節介なのは分かってたけど、俺が橋渡しになって他のやつらとも仲よくなれればって、そう思ってたんですけど……向こうは違ってたみたいで」
「どう違ってたんですか?」
「俺、その頃は普通にタメ口聞いてたから、その先輩とも普通に話せるようになってからはずっとタメ口でした。
それが、先輩からしたら俺が先輩を特別に想ってるって思い込む原因になったみたいで」
「え……でも、その他の先輩にも仲いい人はため口だったんですよね?」
敬語じゃなくため口で話されただけでそんな思い込みをするのか不思議に思って聞くと、結城さんは目を伏せたまま苦笑いをこぼした。
「周りにとっては普通でも、その人にとっては違ったみたいで。
その先輩、サークルだけじゃなくて大学生活自体がずっと周りと溶け込めなくてひとりだったらしいんです。
それを俺が何も知らずに仲良くしたりしたから、過剰に反応したみたいで……」