狼系王子とナイショの社内恋愛
「佐々山課長の事、優輝って呼んでたんですよね」
「あ……」
「それを知ってから、自分の名字が嫌になりました。
高橋さんが俺を呼ぶ度、高橋さんの頭の中には佐々山課長がいる気がして……悔しかった」
結城さんを呼ぶ時、確かに課長の事が頭に浮かんだ事もあった。
だけどそれは最初のうちだけで、今はそんな事ない。
私の中で、結城さんの存在がはっきりと認識されているから。
「今まで呼び方に意味があるなんて思わなかったし、馴れ馴れしく名前で呼ばれると頭にきた事もあったけど。
こんな風に名前で呼んで欲しいと思ったのは初めてです」
結城さんを呼んで課長を思い浮かべる事はないって、それを伝えようとしたけれど、結城さんが話し出す方が先だった。
わずかに浮かべていた微笑みは消えて、真剣な色に変わった瞳に捕えられて動けなくなる。
ドキドキとうるさい胸を感じながらただ見つめ返していると、結城さんが床に手をつき、私に近づく。
狭い部屋だから、結城さんとの距離はもともとそんなになかった。
結城さんから写真立てを隠すために、丸いテーブルで隣同士で座っていたから、少し近づけば肩が触れそうな距離だった。
ぐっと近づいた距離に、緊張と少しの期待が入り混じる。