狼系王子とナイショの社内恋愛


「顔は濃くも薄くもなくて美形で、眼鏡で、スラっとした感じの高身長で……コーヒーにはミルクひとつ入れる人」

志穂の知り合いの中に絶対にいないようにと、無理難題ばかりを並べて、最後にもうひと押しする。
えー、と顔をしかめた志穂に胸をなで下ろしてコーヒーに手を伸ばす。

優輝は、砂糖もミルクもひとつずつだったっけなんてうっかり思ってしまって、一気に気分が沈んでいこうとするから困る。
そんな気持ちに顔をしかめてからブラックのコーヒーで流し込んだ。

二年も付き合ってきたのに、理由もなく別れようだなんて。
私の気持ちは一切無視だなんて、自分勝手すぎるでしょ。なんなの、もう……。
なんで急に別れようだなんて――。

「あっ、いた!」

急にそう声を上げた志穂に顔をあげると、ちょっと待ってて!と笑顔で言われる。
追加注文をしに行ったのか、トイレか、もしくは電話か。

そんな風に思って、映画館の入口でもらった広告に視線を落とす。
今上映している映画一覧を、今日の映画はいまいちだったなーなんて眺めていると、向かいの椅子が引かれた。



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