狼系王子とナイショの社内恋愛


もう帰ろうとしたのに、席を立った私の腕を結城さんが掴むから仕方なく立ち止まって睨みつける。
結城さんはさすがに申し訳なく思ったのか、表情からさっきまで浮かべていた笑みは消えていた。

「こんなにきっぱり振られた事がなかったので、つい……すみません」
「……それは先週振られた上、今日盛大な裏切りを受けた私へのイヤミですか」
「そこまで性格悪くないですよ。
ただ、今まで俺がしてきた恋愛があまりに薄っぺらいものだったんだと痛感したんです」
「結城さんのは、恋愛じゃなくてただの遊びでしょ? 甘い上辺だけすくう遊び。
苦しい気持ちだとか切ない気持ちだとか、やきもちだとか。
全部面倒がって遊んでるだけの人に恋愛だなんて言って欲しくないです」
「すみません。とりあえず座りませんか? あったかい飲み物でも何か持ってきますから」

立っている私を、座ったまま見つめる結城さんがバツが悪そうに微笑む。

多分この人は、悪い人ではないんだと思う。
周りが自分をどう見ているかをよく知っているからこそ、若干ナルシスト気味ではあるけれど、それも仕方ない事だし。

だから、今までの事だって悪気はないんだ。
指摘すればすぐ謝ってくれるわけだし。


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