狼系王子とナイショの社内恋愛


それは自慢なのかなんなのか。

なんだかそんな事を考えるのもばかばかしく思えてきて笑ってしまう。
この人といると、なんだか気が抜けるのはなんでだろう。

「少し、高橋さんの気持ちが分かった気がします」
「そんなんで分かるわけないじゃないですか。
私は結城さんと付き合ってるわけでもないし、浮気したわけでもないんですから。
第一、結城さんだって私をちょっと気になる程度なんですから」
「じゃあどのくらいですか? 高橋さんの傷は」

少し考えてから、結城さんの飲んでいるコーヒーカップを指さした。

「これ、10個分くらい。
アイスすくうスプーンで、えぐりとられたみたいに痛いです」
「……今も?」
「今も」

今も、きっとこの先もずっと。
いつか傷は癒えるのかもしれないし、新しい恋もできるのかもしれないけれど。
私にはまだそんな未来は少しも見えない。

見える限り、先は暗く閉ざされたままだ。
ずっと続く暗闇の中で、ひとりもがいてる。

優輝を忘れようと必死に、闇に溺れてる。


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