こっち向けよ
遠くの方から、ピンポーン…とチャイムが聞こえた。
近くで「はい、ただ今参ります。」という、多分母さんの声が聞こえて意識がハッキリとし始めた。
「あいさん、誰?」
これは間違わない。
舞の声で頭が覚醒した。
「舞ちゃん!工(たくみ)さんと衣織(いおり)さんが帰っていらっしゃったわよ!」
そう言ってパタパタと玄関へ急ぐ母さんと
「まさか…」
と、2ヶ月ぶりに会える両親にいつもなら飛んで喜ぶ舞だが、なぜか顔を強ばらせただけで微動だにしない。
明らかな様子の可笑しさは、これからの事態を予見させた。
俺も思わず同じことを呟いた。
「まさか…」