トイレキッス
日曜日の昼、田んぼ道を歩いていると、偶然仁さんに会った。
「おう、麻見」
「ちわっす」
「散歩か?」
「買い物です。ひまなんで本屋にでも行こうかと思って。仁さんは?」
「おれか?おれはちょっと淵上の家にの」声が低くなる。「殴り込みにの」
洋平が固くなると、仁さんは、冗談よ、と言って笑った。だが、目が笑っていなかった。
「淵上の見舞いに行くだけよ」
「そうなんですか。あ、そうだ。じゃあ、おれも連れていってくださいよ」
「え?」
「おれも淵上先輩のことが気になりますから」
「んん」仁さんは頭をかきながら、しゃあないな、というふうにうなずいた。「わかった。じゃあ、いっしょに行こか」
ふたりはならんで淵上の家に向かった。