トイレキッス
演劇部の活動は行きづまった。淵上がやめてしまうと、台本を書ける者がいなくなる。台本がないと、芝居をすることができない。
仁さんが書いたらどうかという意見が出た。確かに仁さんは一年生の頃に、一人芝居の台本を書いたことがある。しかし仁さんは首を横にふった。
「あかんわ。おれやったら、ゼロから台本を書くのに、最低二週間はかかる。卒業生送迎会には、とても間に合わん」
数日で台本を書きあげるなんて芸当は、淵上にしかできないのだ。
「じゃあ、中止ですか?」
ミツキの一言で、部員達はみんなうつむいた。
とくに二年生は複雑な顔をしていた。彼等には、去年の卒業生送迎会も、淵上が原因で中止になってしまったという過去があるのだ。
結局、これからの予定が決まらぬまま、日々が過ぎていった。
演劇部の雰囲気は悪くなっていった。台本かないから芝居の練習が始められない。しかし卒業生送迎会の発表を中止にはしたくない。部員達は次第にいらだちはじめ、すさんだ空気が部室内にこもる。
そんな中、淵上が登校拒否をしていることを、洋平は女子部員のひとりから聞いた。
やりきれなくなり、その日、洋平は初めて部活をさぼった。